「アイン! おいっ、アインっ!」
 「〜ぉい、シシマル、犬みたいに何度も呼ぶんじゃねぇ。
  おりゃあ犬じゃねぇぞ」
 大きく伸びをしながら、ふわあ〜と大あくび。その頭上から声が降ってきた。
 「ずいぶん余裕だな、マクドガル。自習課題はもう終わってるんだろうな?」
 見上げると、委員長のブライアン・ステルバートが無表情で立っていた。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 ここは、私立ふぇ〜だ学園。
 のびのびとした校風とハイレベルな教育を誇る、多種多様な生徒が集まる学園である。
 生徒の長所を伸ばし様々なエキスパートを育成するこの学園は、多くの優秀な人材を出している。
 3年Cクラスの委員長、ブライアン・ステルバートもその一人。
 将来は指揮官として期待される有望株である。

 「まったくよぉ……」
 がぶっ! と、ふてくされながらアインは昼食の菓子パンにかぶりつく。
 「何なんだよあいつは!? いちいち俺に突っかかりやがって!」
 午後の屋上は日当たりが良く、ぽかぽかと暖かい。
 「堂々と寝るアンタが悪いと思うんだけどなァ……」
 呆れた顔で突っ込みを入れたシシマルをきっちり無視して、
 「気にくわねぇ……」とアインは呟いた。
 この学園に入学してから、アインに怖いものは無い。
 気に食わない奴はぶちのめす。立てつく奴は叩(はた)き倒す。
 気に入らない事はとことんしない。
 その強さとワガママさから、アインはある意味カリスマである。教師でさえ、何人か病院送りにされたことで彼に注意する者はいなくなった。そして3年になった今、逆らう者はいないといっても過言ではない。
 だがしかし。
 たった1人だけ、アインに平然と文句を言う人物が出現した。
 昇級に伴うクラス変えで初めて同じクラスになった、ブライアン・ステルバート。
 1年からずっと風紀委員を続け、今や学園の風紀委員長である。
 「いっつも仏頂面しやがってよぉ、何か俺に文句あるってのか?」
 「そりゃあ、委員長からしてみれば、アンタは文句のカタマリなんじゃねぇの?」
 学ラン改造、長モノ違法所持、遅刻にバックレ……。と、楽しそうに続けたシシマルを無言で殴った。
 「痛てぇじゃねぇか! 何すんだよ、全部ホントの事じゃねぇか」
 「……それが余計ムカツクんだよ」
 大体、何でアイツ、俺に楯突けるんだ? と首をひねると、
 「だって、強えぇぜ、委員長」
 ぢゅー、とパックジュースを飲みながらシシマルが笑う。
 「……え、強えぇのか?」
 「おぉよ。アンタと同じ位、下手したらアンタより強えぇかもしんねぇぜ」
 大会とか出ねぇし、日頃はあんな風に大人しいからわかんねぇけどな。
 だからアンタに楯突けるのさ、と、ニヤリ。
 「俺からしてみれば、アンタラのやり取りは面白れぇがね」
 笑うシシマルの頭を問答無用で殴って、
 「面白くねぇよ」
 アインは短く吐き捨てた。

 6時限とホームルームが終わって生徒達がいっせいに帰り出す。
 今週はテスト前なので部活も休みだ。
 「マクドガル」
 帰ろうとしたアインを呼びとめる声がした。
 「今日の自習課題、提出してないだろ」
 「いぃじゃねぇか、出してない奴ぁ俺だけじゃねぇだろ」
 振り向かなくても誰かは判る。ウンザリしながら肩越しに手をヒラヒラさせるアインに、
 「お前だけだ」
 キッパリとした答え。
 嘘だろ、と、思わず振り返ったその先には、ムッツリ顔のブライアンと、すまん! と笑いながら手を合わせるシシマルの姿。
 やれ、と差し出された自習課題のプリントを前に、少しだけ黙り込んで、
 「……わーったよ」
 ふてくされながらアインはそれを受け取った。

 「……で」
 生徒達がすでに下校してしまって静まり返った教室に声が響く。
 「何でお前まで残ってんだよ」
 プリントを挟むようにして、アインの机の前にブライアンが座っている。
 「好きで残ってる訳じゃない」
 ムッツリとした声と表情にプチッと何かが切れた。
 「じゃあ帰れよ」
 机を蹴るようにして立ちあがる。
 「やってらんねぇぜ。俺は帰る」
 「待て!」
 伸ばされた手がアインの手首を掴んだ。
 「みんなやったんだ。お前だけやらないのは不公平だろ」
 思いがけず強い力で握られた手首。平然と止められて、カッと頭に血が上った。
 気に食わねぇ……。
 平然とした顔をして俺と対等に渡り合おうとする。決して思い通りにはならない。
 気に食わねぇんだよ、お前。
 「っ!?」
 掴んだ手を思いがけず引かれてグラッと体勢を崩したブライアンを机の上に押し倒す。
 押さえ込まれて必死にもがくその表情(かお)にこみ上げるのは、奇妙な満足感。
 「……へぇ、そんな表情(かお)もできんじゃねぇか」
 必死で抵抗しようとするブライアンの両手首を捕まえて、まとめて左手で頭上に押さえつける。
 もがく足の間に体を入れるのは簡単だった。
 上体で暴れるブライアンの動きを封じ込めると右手で腿を撫で上げる。
 「やめろっ! 離せぇっ!!」
 見たことの無いブライアンの必死な表情。
 ビーッ! と布の裂ける音が響いた。喉の奥で笑いながら、アインは引き裂いた白い布を投げ捨てる。
 直感的に自分が何をされるのかを理解して、怯えて目を大きく見開いたブライアン。
 その表情に、たまんねぇ。と、笑いながら。

 貫いた。

 しぼりだすような、掠れた長い悲鳴が迸る。
 引き裂かれる激痛に、必死に逃げようと体が跳ね上がる。
 無理やり開いた体が示す最後の抵抗に眉をしかめながら、それでも最奥まで踏み入った時。
 見開かれたブライアンの瞳から零れ落ちる涙に感じたのは、突き上げるような昏(くら)い歓喜。
 「はな、せ……っ!」
 泣き出しそうに眉をゆがませて上げた、掠れた、精一杯の抵抗の声に、
 「そんなこと、言ってイイのか……?」
 クスクスと笑いながらゆっくりと腰を引き、一気に深く突き刺す。
 息も出来ないような激痛に流れ落ちる涙。
 「ほら、言ってみろよ、いつもみたいに。やめろ、マクドガル、ってよ……」
 無理やり開かれた体から血が溢れ出す。
 自分の血で潤された体が、意思に反していくらか楽にアインを受け入れる。
 「や……め……っ」
 「ちゃんと言えよ、聞こえねぇぞ」
 ゆるゆると動かれて、痛みと悔しさとショックで正気を失っていく。
 開放されるかと思えば、押し入られ、征服され。
 「や、ぁ……っ……」
 くしゃっと顔がゆがんだ。
 浅く荒い息。がまんするように、途切れ途切れにもれる嗚咽。
 「イイ表情(かお)すんじゃねぇか……」
 ゆっくりと揺さぶられながら耳元で囁かれて、ぶるっと体が震える。
 「……ぁあ……っ……」
 微かにこぼれた、小さな、甘い、声。
 少しずつ、自分の動きに同調していくブライアンの動きに、また笑いをもらす。
 「カワイイ声出しやがる」
 耳元で囁きながらかきまわすと、びくんと体がはねた。
 「っあ! あ、あぁ……」
 「おいおい……。委員長がこんなコトしてていいのかよ」
 笑いながら囁かれた言葉にイヤイヤをするように首を振りながら、キュッと唇をかみ締める。
 「面白れぇな……。気に入ったぜ、委員長さんよ」
 激しさを増した動きにすぐに唇は解けて。
 甘い声を上げるブライアンをアインは追い上げた。

 ぐったりとした体は動こうとしない。
 犯されたままの格好のブライアンを、身支度を終えてアインは振り返った。
 内腿を伝って流れる、血と、白いもの。涙に濡れた頬。飛び散った白い液体。
 近寄ってその髪に触れる。
 「なかなか良かったぜ、委員長さんよぉ」
 さら、と指を離れる感触に喉を鳴らしながら、
 「また頼むぜ。俺に突っ込まれてイッちまった、なんてバラされたくなかったらな」
 くくく、と笑って身を翻した。
 遠ざかる足音を聞きながら、閉じたブライアンの目から、一筋涙が零れ落ちた。

 

 翌日、体育の時間。
 「おっ、珍しいなあ。今日はアンタが出て委員長が休んでる」
 グラウンドを走りながらシシマルが声を上げた。
 「まぁな。たまにはこんな日もあるってことよ」
 喉の奥で笑い、木陰で休んでいるブライアンを横目で見ながらアインが応える。
 目の前を走りすぎるアインを見ながら、ブライアンは目を伏せた。
 その唇がひっそりと声にならない言葉を呟いた。

 俺の気持ちなんて、お前は知らない。
 
 

〜 終(あるいは続く……かも?) 〜

「姫は野獣の夢を見るか?」

小説&挿絵着色…いずみ//挿絵(線画)&パロ設定(笑)…ななちょ
い:ふぇ〜だ屋2作目のコラボ作品です。お題提供はななちょ様より(笑)
学園ものパロディ、委員長ブライアンにヤンキーのアイン。
テイストは鬼畜でというご要望にお応えして書き上げました(爆笑)
拙い作品ですが楽しんで頂ければ幸いです♪

な:お題提供者張本人ですw(笑)パロ系で学園物+鬼畜(爆笑)
挿絵は確かに私ですが、実は“線画のみ”なので(着色もいずみ様作!)
ほぼいずみ様の作品と言っても過言ではないのですが(爆)
何とも図々しい私はコラボ作品へ載せるのです!(最低!)
いやはや改めまして、いずみ様有難う御座いましたですーッ!(嬉々v)
皆様もどうぞご堪能下さいv(笑)

2006.04.07 up ! いずみ&ななちょ