2008年クリスマスSS「Pray」おまけ(その2) UPDATE 08/12/25
       

 「も…っ、や、ッだ…ぁ…っ」
 はふ、と浅い息に混ざる、切れ切れの苦言。
 それに応えて低く喉を鳴らし笑う気配がした。
 ブライアンは胸の苦しさに眉を寄せる。
 アインがもたらす、変になりそうな快感からもう逃げたいのに。同時に、自分の中に潜む狂気を見透かされたようで、苦しくなる。
 「止めるか?」
 なんて、笑いを含んだ問いかけに、きつく目を閉じる。
 答えなんて、出せないまま。

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 クリスマスイブの夜。
 夕食の後、アインはどこかへ出かけていった。
 夕食後に出されたささやかなケーキに子供達は大喜びで、食堂に飾られたヒイラギの下、あのヒューマンの女性からキャンディをもらって、はしゃぎながら部屋に戻っていった。
 俺も部屋に引き上げ、書類の仕上げをしながら、ふと窓の外を眺める。
 窓枠に積もる、白い雪。
 暗闇の中に浮かび上がる、うっすらと白に染められた銀世界。
 夜も更けて、音もしない。
 聞こえるのは、部屋を暖める暖炉で時折爆ぜる、薪の音だけ。
 
 静かだな、と、思う。
 1人きりの時間なんて、いつ以来だろう?
 傍らにアインがいないだけで、こんなにも静かだ。
 ――そして、……ひとり、だ。
 窓に映る自分は、何だか寂しげな表情(かお)をしていて。
 ブライアンは少し、苦笑する。
 ――アインがいないだけなのに、なんて顔してる、俺。
 そこに潜む感情に見ない振りをして。
 目を伏せると、窓に映る部屋の中で、扉が開いて相棒が入ってきたのが見えた。
 「アイン」
 頭に積もった雪もそのままに、アインは手に持った瓶を差し上げて見せる。
 「……シャンパン?」
 「おぅよ」
 珍しいモンがあったからな。
 持っていた瓶と紙袋を机に置きながら呟かれたセリフに、ふ、と顔がほころんだ。
 何の気なしに、なんて、嘘つきめ。
 大方、昼間したクリスマスの話が頭にあったんだろう。
 素っ気無くしかできない、アインの気遣い。それに気付くたび、ブライアンの中の何かが、本の少し、切なく疼く。
 「アレは?」
 机の上の書類に目をやったアインに、
 「終わり。やっとゆっくりできる」
 「そーか。じゃあ呑めるな」
 嬉しそうに紙袋から酒のつまみを取り出すアインに、準備万端だな、と笑いながら、部屋の鍵を閉めた。

 交わす杯が回を重ね、珍しいシャンパンに気持ちが浮き立つ。
 ふわふわとしたほろ酔い気分に微笑み、目に付いたヒイラギの鉢を引き寄せた。
 「なあ、プレゼント、もらえるんだったら何がいい?」
 ちくちくした葉をつついて遊んでると、アインが喉を鳴らして笑った。
 何か企んでいるような、悪戯顔。
 「そーだな、お前なんてぇどうだ?」
 「悪趣味め」
 ふわっと楽しくなってクスクスと笑みがこぼれる。
 酒の席での戯言、何度も重ねた体の関係。
 ほろ酔い気分の身体で抱かれる感覚は悪くない。
 ほわんと立ち上がり、ベットに倒れこむ。寝転んだまま振り返り、口の端を上げた。
 「来いよ。欲しいンだろ」
 「後悔すんなよ?」
 のしかかられた身体に、何を今更、と笑い、馴染んできた重みを受け止めた。

 何度イッたか、なんて、もうわからない。
 「も…っ、や、ッだ…ぁ…っ」
 はふ、と浅い息に混ざる、切れ切れの苦言。
 それに応えて低く喉を鳴らし笑う気配がした。
 ブライアンは胸の苦しさに眉を寄せる。
 アインがもたらす、変になりそうな快感からもう逃げたいのに。同時に、自分の中に潜む狂気を見透かされたようで、苦しくなる。
 「止めるか?」
 なんて、笑いを含んだ問いかけに、きつく目を閉じて。
 答えなんて、出せない。
 与えられる感覚に気が変になりそうなのが怖くて、もう、止めて欲しいのに。
 このまま堕ちて、狂ってしまいたい自分もいて。
 「ひあ…ッ! …ッあ、あ、あ」
 ぐち、ぐち、と下から突き上げられ、イイところを執拗にえぐられて、いやいやをしながら喉を晒す。
 「イイじゃねぇか…。窓、見てみろよ」
 囁かれた、擦れた声にまで走る、背筋の甘い刺激。
 目を開けると、夜の闇で鏡と化した窓が、人を映し出していた。
 「………ッ!?」
 一瞬の後、きつく目を閉じる。
 最初、何が映っているのか分からなかった。解かった瞬間、その表情は消えたけれど。

 上気した頬。
 涙をあふれさせた虚ろな瞳。
 力なく開かれ、唾液をあふれさせる、艶かしい唇。
 映し出されたのは、快楽に呑まれた自分の表情。

 「や、だ……っ違うっ……!」
 あってはならない。
 「自分」を失うなんて、あってはならないのに。
 そう思うのに、目の前に映し出されたものに打ちのめされて、快感と苦しさに涙がこぼれる。
 「違わねぇ。――見ろよ」
 「やだ…っ!」
 見たくない。見たくないのに。
 「見ろ、ブライアン」
 静かで、でも有無を言わせない声に、死刑を受けるような絶望的な気分でブライアンは目を開ける。
 窓に、目に映るのは、足を開かれ深くアインを飲み込む、己の姿。
 「しっかり見てろ。目ぇ閉じんじゃねェぞ」
 低い声。窓鏡の中のアインが強い瞳でブライアンを見つめる。
 窓鏡から自分を見つめる、熱が冷め、萎えた、怯えた表情の男。
 太腿を押さえつけていた手が動き、ゆっくりと脇腹を撫で上げる。かするようなじれったい動き。
 窓鏡の中の男が、ふるりと震えた。
 怯えた表情が、何かを耐えるように、眉を寄せる。
 撫で上げた手が時々乳首を掠めながらゆっくりと胸を撫で回し、じれったい動きに微かに頭を打ち振る。
 瞳から涙がこぼれる。
 窓鏡に映るのは、勃ち始めた己の中心。
 「見てるんだ」
 背後から囁かれる声。正面の窓鏡から自分を見つめる瞳。
 窓鏡の中の自分が、囁かれて、ひくん、と震える。
 「ココ……」
 かり、と乳首をひっかかれて身体が跳ねた。
 「好きだよな」
 くにくにと嬲られて、窓鏡の中の男が泣き出しそうな表情を晒す。
 無意識に胸を突き出して。
 アインを飲み込んでいる部分がもどかしくて。
 嫌なのに、窓鏡の中の自分の中心は反り返り、蜜をたらしていて。
 
 身体と心が、二つに裂かれる。
 苦しくて。身体が切なくて。どうしたらいいのか分からなくて。
 「あー…っ」
 不意に中心を包まれ、こみ上げそうになる何かを必死に我慢する。
 きゅっと根元を押さえられ、眉を寄せた。
 「やだ…やだ……っ」
 身体の中に燻る熱。
 感じる、訳のわからない不安ともどかしさに怯えて、涙がこぼれる。
 「なんてぇカオ…しやがる」
 擦れた声が呟いて。
 窓鏡に映るのは、泣き出しそうに潤みながら、唇を僅かに開き、熱を孕んだ、何かをねだる様な、淫らな表情。

 (あれ…俺、だ)

 ゆるやかに揺すぶられ、もどかしさに頭を振って、濡れた唇が微かに動く。
 自分のと。窓鏡の中の男。

 コ  ワ  シ  テ  。

 音にならなかった言葉が、自分の中に落ちて、すとんとはまった。
 気付きたくなかった、 本当の想い。

 失う事は怖いから。
 失った時の痛みが怖いから。
 自分を明け渡してしまったら、失った時、壊れてしまうから。
 そうしないように、自我という砦で自分を守ってきた。
 自分で耐えられる範囲でしか、他人を受け入れてこなかった。
 ずうっとそうしてきたから、それ以外やり方を知らなくて。
 でも本当は、本当は……アインに、全部、奪って欲しくて。
 守ろうとする自分の自我を壊して欲しくて。
 でも出来なくて、相反する感情が苦しくて。

 「アイン……ッ」
 苦しくて。苦しくて。涙がこぼれる。
 窓鏡の中から俺を見つめる、まっすぐな、強い瞳。
 「……堕ちてこい」
 ぎち、と根元を握り締められ、痛みに、ひく、と跳ね上がる。
 「俺ン中に」
 囁かれる低い声に熱があがる。
 不安と、恐怖と、……期待、と。
 「……壊してやッから」
 「―――――ッッ!!」
 言葉と同時に、千切れそうな強さで乳首をひねり上げられて。
 突き上げられた衝撃が、痛みと一緒になって全身を走り抜けて。
 根元を締め付けられてイク事も出来ず、がくがくとのたうつ。
 「……っ、かは……ッ」
 目を見開いて、息も出来なくて。やり場のない熱が身体の中を暴れて何も考えられない。
 ぐちゃぐちゃにかき回されて、イイ所を深く強くえぐり上げられて。
 「……っだあっ……ッかせ……てえっ……! ぉねが……いぃ……ッ!」
 イキたくて、堪らなくて、初めて、泣きながら叫んだ、懇願の言葉。
 「まだだ、もっと」
 緩めてはもらえない根元の指に、頭を振ってイヤイヤする。
 もう、もう、どうしようもなくて。
 「……っ、く……」
 突き上げられ、引っ張られ、快感と痛みと苦しみのごたまぜの中で、いつの間にか。 
 「ふぅ……っくっ……っえっ……あ、ひっ! ……っく」
 子供のように泣きじゃくりながら。
 「ゆ、る、して、……ゆるし、て、ぇッ……!!」
 幼い口調に、ふ、とアインの目が笑みを浮かべる。
 「俺のもンになるか? してって言ってみな」
 「……シ、てェ……、っあ、イ、ンの……ッ……もの、に、いッ……!」
 ぽろぽろと零れ落ちる涙。背中に口付け、アインは囁く。
 「してやるよ、俺のもンに」
 根元を締め上げていた手がするりと外れ、両足を抱えられてゆっくりと持ち上げられ。
 抜かれるもどかしい刺激ではイク事ができず、もっと強い刺激が欲しくて、唇から蜜がこぼれる。
 「だから……ッ」
 「……ッつ、ぁあ――――――ッッ!!!!」
 いきなり最奥に打ち込まれた衝撃に、がくがくと身体を震わせながら白濁を吐き出す。
 打ち付けられ、かき回されながら白濁を吐き出し続けて。
 「や、っあ……っと……まんな……ぁッ!」
 泣きじゃくりながら、自分の白い蜜に濡れるブライアン。
 真っ白な頭に低く囁きが流し込まれる。
 「おめェは全部……俺のもンだ」
 体奥に打ち付けられた熱い衝撃に身体を硬直させて、意識を高みに持ってかれながら。
 とろけそうな笑みをブライアンは浮かべていた。

 翌朝。
 目が覚めると、身体は綺麗に拭き清められていて。
 横に眠るアインを見下ろして、ブライアンは、ふ、と笑った。

 胸に広がるのは、もどかしくて、切なくて、照れくさくて、あまずっぱい、そんな感覚。
 銀の髪をすくいあげ、見つめ、口付けると、いきなり腕を引かれ体勢を崩した。
 「朝ッぱらから誘ってンのか?」
 上になったアインにニイッと口角を上げられ、真っ赤になって目を逸らす。
 ブライアンの様子に喉を鳴らして笑いながら、アインは耳元に口を寄せた。
 「お前は俺のもンだ」
 呟いて、耳に口付ける。
 囁かれた言葉に身体を震わせて。
 しばらくためらった後、おずおずと首に回された腕に、アインは微かに微笑んだ。

 出発の朝。
 手渡された鉢植えに、ヒューマンの女性は柔らかく微笑んだ。
 「クリスマスに奇跡は起こったのかしら?」
 言葉では応えず、照れくさそうに、ブライアンも笑みで返す。
 自分を呼ぶアインの声に、女性に一礼して、走ってゆく。
 後姿を見送りながら、女性は辛そうな笑みを浮かべた。
 誰よりも危険な戦場へと身を躍らせ、多くの命を手にかける、本当は傷つきやすく優しい、ヒューマンの若者。
 駆け出してゆくその姿が、やはり戦場へと行き、帰ってこなかった息子と重なる。
 ヒイラギの鉢植えを手に持ちながら、彼女はただ、祈った。
 どうか彼や、彼の愛するものが救われますように、と。

 

〜「Pray」 side story - end〜  
 

・・・ あとがき ・・・ (黒で入れてますので下記よりドラックして下さい)
発端は、「続きは?」との、ななちょ様の一言でした(いきなり責任転嫁かい/笑)
まぁ、ERO無しは「ふぇ〜だ屋」の名が泣く(……かどうかは知りませんが)、というか、
事前に頂いていた、ななちょ様の素晴らしき導火線イラスト(トップ絵)に着けられた火が燻っていたので(笑)
好きなんだけど、深く関わるのが怖くて一線を引いて自分を守ってしまうブライアンを
!EROに絡めて(←ここ重要)! 書いてみました。
アインの攻め落とし(笑)も楽しんで頂ければ幸いです(*^ ^*)v

2008年12月25日 いずみ拝

発端の根元凶のななちょです(爆!).
いやいやぁ〜!愛(ERO含)が有っってこその!(激強調)【ふぇ〜だ屋本舗】です故に★
ここは是が非ともヲマケSS(この際EROだなんて贅沢言わない!/笑)を書いて頂かねば!(NA N I SA MA!)
と、いずみ様のやる気のロウソクに灯火してみました〜///(笑)
発端は再燃萌下されば好いな☆という想いで(トップ絵を)捧げてみましたらば、
雅かの拙い楽描きがアレマア!不思議★扇情的で尚且つ綺麗な文章表現で!
とても素敵なコラボ作品に 大!変!身〜! で御座いまーす!!(笑)
デンジャーDE導火線なイラスト(いずみ様談/笑)を皆様にもこうして無事お披露目出来た訳で☆
いずみ様には毎度毎度感謝感激で御座います〜(崇)本当に有難う御座いました!!(平伏)
攻め落とし(笑)アインの表現に毎度クラクラv受けブライアンの表現に毎度ムラムラ(コラ)
いずみ様の表現なさる双方の関係が又…!好いンですよね〜〜///(魅&悦)
この篤く滾る気持ちを是からも共感して行きましょうぜぃ☆彡(←誰)

2008年12月26日 ななちょ拝

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